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​【エッセイ】僕の病気と桜井敏郎「風の丘に寝転んで」

音像はよりカラフルに、ボーカルの声質はより鮮やかに、優しく表情豊かに生まれ変わった「風の丘に寝転んで」。

以下のウェブページに購入とサブスクへのリンクがあります。

「風の丘に寝転んで」購入・サブスクリンク集

繊細でウェルメイドな泣ける王道ポップスの完成形だと思う。

上昇系のメロディで景色が開けていき、風の丘に誘われる心地がするようなサウンドのイントロ。

冒頭のボーカルにディレイがかかり、「間違えは正しくて/正しくは間違いで」という歌詞が心の中で反響し合っているような心地になる。その後に「いつも不安になってゆくことばかりで」という歌詞が続くと、これは僕のための歌だという気持ちになる。

統合失調症を抱え、いつも不安で頭にモヤがかかる僕も、この風の丘でのびのびと自分をさらけ出せる気がする、僕にとって特別な曲だ。

「風の丘に寝転ぶ
 すてきな気持ちでひざまずく
 何もかもが許されてゆくような
 気がするよ」

自分という存在が許されるという感覚を覚える。何をやっても、自分がどんな存在であっても、許されていくような気がする。こんなに優しい曲を僕は他に知らない。大抵の曲は「悪いことをしなければ」という限定がつくが、この曲は悪いことをしても許されるという思いになるのだ。どんな犯罪者であっても、どんな悪人であっても許してくれる、そんな曲。

世の中には犯罪者を許せない人々が大勢いる。もちろん、僕は犯罪を犯す気はないのだが、犯罪者も存在は許されていると僕は思う。「罪を憎んで人を憎まず」という言葉を思い起こしてほしい。

しかし、大切な人を傷つけられたら、傷つけた人を厳罰に処してほしいと僕は思うだろう。世の中は人間同士が傷つけ、傷つけられ、憎しみが連鎖していく。その憎しみを自由な風に向かって解き放って導いていくようなメッセージをこの曲から感じるのだ。

「愛はいつも人を苦しめる
 時に誰かを傷つける
 いつか導かれてゆく
 やさしい風に」

ボーカルとコーラスからもあふれる、この曲の優しさが世界を包んだら、人を故意に傷つけるような犯罪もなくなるだろう。

僕は統合失調症の病苦のために自殺を考えたことが何度かある。苦しい時に友人に誘われたSAFETY SHOESのライブで桜井敏郎さんが歌った「風の丘に寝転んで」。僕は救われ、この曲にすがるような思いになった。

数年前までは、苦しいことを許せず、なぜ自分がこんなに苦しまなければいけないのか分からなかった。そのことで余計に自分を苦しめていた。そして、それから様々な経験を経て、僕は僕の苦しみを許せるような心境に至った。今、この曲を聴いていると、苦しみも優しい風に導かれ、全てが報われていくような気がするのだ。

「風の丘に寝転ぶ
 すてきな気持ちでひざまずく
 何もかもが報われてゆくような日が来るよ
 風の丘に広がる
 空に僕をさらけ出す
 忘れられた懐かしい声が
 聞こえるまで」

細かい心情を伝える、ニュアンスに富んだ桜井さんのボーカルが僕の心の檻を溶かしていく。苦しんでいる僕自身の、傷つけた彼や彼女自身の、傷つけられた彼や彼女自身の、それらの明るく温かな声がまた聞こえてくる。

すてきな気持ちになれる、すてきな曲だと思う。誰をも排除せず、誰をも包摂する桜井さんのすてきなメッセージが伝わってくる。僕もこれからも歩みを進めていきたいと思える。

この優しさと切実さを僕のフォロワーの皆さんにも聴いてほしいです。

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